イキスギコードとは、何?と思って、調べたら話が難しくて、さらに「よくわからない」という結果になりました。
ですが、音楽理論の用語がわからない初心者や素人でもわかるように、順を追って解説していきす。
コードやコード進行に名前が付く現象
コードとは、和音のことで、コード進行とは、コードの流れ自体に名前が付いたものです。
小室進行とか、カノン進行とか、王道進行など、よく使われたり、特徴的なコードの流れに、共通言語として、作曲者や曲名などを用いて、いろんな名前がついています。
そんな中、動画配信者の「ゆゆうた」さんが、あるコードに「イキスギコード」と名前を付けたことで、話題となったみたいです。
しかし、そのコードを紐解いてみると、「田中ang」(オギュメント)とも、言われているコードでした。
田中とは、作曲家の「田中秀和」さんのことを指しています。
「分数aug」という名前もあるようです。
海外では、「Blackadder Chord(ブラックアダーコード)」(黒蛇コード)と、名づけられたようです。
呼び方は、共通認識で、話が通じればよいので、TPOに応じて使い分けましょう。
コードネームの解説
コードの解説から入ります。
コードとは、3和音のことを指します。
4和音になると、7thとついたり、テンションコード・分数コードと呼ばれるものになったりと、名前がどんどん変化していきます。
魚でいうと、何センチ以上は、名前が変わる、出世魚みたいなものです。
地域によりますが、「ワカシ → イナダ → ワラサ → ブリ」みたいなことです。
テンションコードとは、コードに対する飾りの音です。
もみの木に飾りをつけたら、「もみの木」から「クリスマスツリー」と名前が変わるようなものです。
3和音のコードで一番重要なのは、3番目の音です。
3番目とは、ルート音(根音)から数えて、3番目です。
数の数え方も、半音階ではなく、メジャースケールを基準に数えています。
ギターのフレットで数えると、3番目にはなりません。
それと、よく間違えたり、混乱している人は、間の数を数えてしまっています。
ド・レ・ミだったら、ドが1番目でレは2番目でミが3番目です。
ギターで考えると、開放弦の0フレットを1として数えないと、混乱します。
メジャーコード、マイナーコードはご存じだと思いますが、この3番目の音が重要になって来ます。
3番目がメジャーかマイナーで、コードネームが変わります。
4和音の解釈はややこしい
ややこしいのは、4和音は、どこを基準に考えるのか?というのが、名前の違いになって来ます。
例えば、C△7(シーメジャーセブンス)は(ド・ミ・ソ・シ)が構成音ですが、この中にある(ミ・ソ・シ)はEm(イーマイナー)です。
見方を変えたら、ルートが「ド」のEmとも解釈できます。
表記で書くとしたら、Em/Cです。
「/」(スラッシュ)の次に書いてあるアルファベットは、ルートはこの音で弾いて下さいという指定です。
このことを「分数コード」と言います。
「/」が分数の真ん中の線の意味です。
他の表記では、「Em on C」と書きます。
真ん中に「on」が入っていることから、オンコードとも呼びます。
音楽理論の本を少し読んだことがある人は、代理和音というのを聞いたことがあると思います。
考え方は、同じで、コード「C」の代理和音は「Em」と「Am」です。
なぜなら、構成が似ているからです。
こういう、コード「C」の代わりに使っても、「違和感があまりないですよ。」という結果の集まりをまとめたものが音楽理論です。
・イキスギコードとは
では、本題に入ります。
イキスギコードと呼ばれているコードの構成音は、(ド・ソ♭・シ♭・レ)です。
「C blk」と表記することもあります。
「blk」は「Blackadder Chord(ブラックアダーコード)」のブラックのから来ていると思います。
Ⅰaug/#Ⅳとは
使いやすい、イキスギコードの「Ⅰaug/#Ⅳ」(#Ⅳ blk)から始めます。
細かく解説をして行きます。
「Ⅰaug/#Ⅳ」も(#Ⅳ blk)も同じコードです。
「aug」(オギュメント)とは、増5度のことを指しています。
増5度とは、「5番目の音を半音上げましょう」ということです。
「Caug」と書いてあったら、構成音は(ド・ミ・ソ#)になります。
「C+5」と表記することもあります。
「Ⅰaug/#Ⅳ」は「Ⅰaug」というコードにルートを「#Ⅳ」を持って来ましょう。ということです。
「#Ⅳ blk」だと、「blk」がなんだかわからない人には、意味が通じません。
自分で作曲していって、手書きのコード譜を書く場合には、さっと「#Ⅳ blk」でも良いと思います。
C9dim5omit3とは
もう少し別の角度から、解説します。
コードの構成音の、(ド・ソ♭・シ♭・レ)は、「C9dim5omit3」とも解釈できます。
読み方は、「シー ナインス ディミニッシュ ファイブ オミット スリー」です。
「C9」から行きます。
「C9」の「9」はテンションノートです。
「レ」は「ド」の次なので、2番目ではないか?と思われるかも知れませんが、そう数えません。
ドレミ~と数えて行って、次のドはオクターブ上のドと言います。
オクターブ上のドは8番目です。
8番目の次にレが来るので、レは9番目と解釈します。
9thのテンションノートは「♭9」「♮9」(ナチュラル ナインス)「♯9」の3つあります。
dim5とは
次に、「dim5」(ディミニッシュ ファイブ)です。
「-5」と書く人もいますが、マイナーを「-」と書く人もいるので混乱すると思います。
なので、私は「dim」の方が良いと思います。
日本語では、「減5度」です。
ここで、また、ややこしいのは、「増4度」と「減5度」は同じ音問題です。
コードネームの表記に「フラット派」と「シャープ派」に分かれます。
(ド・ソ♭・シ♭・レ)はフラットで書かれていますが、(ド・ファ♯・ラ♯・レ)でも言い訳です。
「シャープ」や「フラット」の付け方は、自分が瞬時にわかりやすい方を使って下さい。
慣れていない方を見ると、混乱します。
マニアックな話をすると、「シャープ」や「フラット」で指している音が同じになっても、厳密には、違います。
何が違うかと言うと、純正律の場合の話です。
我々が聞き慣れていたり、使い慣れている音楽は、西洋音楽の平均律です。
純正律で、「増4度」と「減5度」の違いを聞き分けると、若干違います。
「ダブルシャープ」や「ダブルフラット」というものもありますが、これも厳密には、純正律では、響きが違います。
omit3とは
「omit」(オミット)とは省略という意味です。
「3番目の音を省略しましょう。」というのが、「omit3」です。
コードでは3番目が一番重要という話をしましたが、3番目はコード感がでてしまったり、癖が強いので、邪魔になることもあります。
主にロックなどで、「C5」や「Comit3」と書いてあることがあります。
これは、ロックでは「パワーコード」と呼ばれるものです。
ギターの音を歪ませると、コード音を全部弾くと、音が汚く聞こえます。
なので、3番目を引いて弾くこともあります。
ドミナント7の解説
(ド・ソ♭・シ♭・レ)の(ソ♭・レ)の解説はしましたが、残るは「シ♭」です。
「シ♭」は7thです。
7thは「ドミナントセブンス」と「メジャーセブンス」の2つあります。
このドミナントセブンスは、「9th」というテンションノートがあるときは、省略して書かないことが多いです。
「C7(9)」と書いてあることもありますが、自分で楽譜を書くときはわざわざ書かないということがあります。
ただし、「Cm7(9)」の時は、ちゃんと書くことはあります。
テンションノートを詳しく解説していきます。
テンションノートはコードによって、使っていいものと使ってはいけないものがあります。
「C7」というのは、ドミナントコードなのですが、この、ドミナントコードとは、不安定な響きのするコードです。
ドミナントコードに使っていいテンションノートは「9」「♭9」「♯9」「♯11」「13」「♭13」とたくさんあります。
なぜこんなに多いのかと言うと、元々不安定な響きのコードに、何を足しても、不安定な響きにはわからないからです。
イキスギコードの使い方
イキスギコードが使いやすいのは、「Ⅳ△7」の前に持ってくることです。
※ △はメジャーのことです。
♯Ⅳ dlk → Ⅳ△7
となります。
コードネームだけだと、実際にどう弾くかわからないと思うので、一つの例を載せておきます。
♯Ⅳ dlk(ファ♯・ソ♯・ド・ミ) → Ⅳ△7(ファ・ラ・ド・ミ)
です。
ゆゆうたさんの動画の中で、「次に行くよ」「ここに入るよ」と言っているのは、通常のコード進行に、アレンジとして、イキスギコードを入れています。
もし、作曲で使いたいのであれば、わかりやすいコード進行を作って、メロディーができた後に、ここのコードがシンプル過ぎるから、「オシャレにしたい」などしたい場合に、経過音的な要素で入れてみると良いです。
度肝を抜いた田中aug
田中augで有名な曲は、雀が原中学卓球部の「灼熱スイッチ」という曲のサビの冒頭から「blk」が使われていることです。
普通は、コードとコードの経過音として、お洒落なコードをポップスでは使いますが、サビの冒頭とは、快挙です。
テンションノートのボイシング
ボイシングとは、コードの並び方のことで、弾き方の転回系の話になります。
コードCと合った時に、必ずしも、「ド・ミ・ソ」と弾かないといけない訳ではありません。
「ミ・ソ・ド」や「ソ・ド・ミ」でも良いです。
テンションノートのは、オクターブを超えた音です。
ピアノの場合は、日本人の普通サイズの手の大きさでしたら、オクターブは届きます。
なので、テンションノートは、指が届かないのです。
バンド編成で、ベースがいる場合は、ベース音はベーシストに任せるので、左手はコードを転回したボイシングで弾いて、右手でメロディーを弾くことが多いです。
一人でピアノを弾く場合は、メロディーを声で歌うのか、右手で弾くのかによっても違いますが、基本を左手は、ベースラインを弾いて、右手で、コードのボイシングとメロディーを同時に弾くことが多いです。
それを踏まえた上で、解説すると、テンションノートは、オクターブの範囲内に持って来ます。
アルペジオなどで、広く使うこともできますが、コードとしてかき鳴らすのであれば、ルートは左手で弾いて、右手は、オクターブに収まるように、コードを転回して弾きます。
転回の仕方に正解はありません。
並び方を変えるだけでも、響きは全然違って来ます。
前後のコードの流れから、判断して、なるべく、近くでコードを作ります。
次のコードは近くで作らないと、コード自体がメロディーの役目を果たしてしまって、メインのメロディーを邪魔することがあります。
まとめ テンションコードや分数コードがよくわからない
この、テンションコードや分数コードがよくわからないという現象は、「聞き慣れているかどうか」の問題です。
「9th」というコードは、非常に便利で、いろんなコードに使えます。
聞き慣れない人は、なんか違和感を感じますが、ずっと使っていると、「9th」がないと、コードの響きが物足りなくなります。
試しに、普段弾いているコード進行に全部「9th」を入れてみましょう。
一気に、コード進行がお洒落になります。
他のテンションコードも、一回使い始めると、普通のコードトーンでは、物足りなく感じていきます。
ボカロやアニソンやアイドルの曲は、どんどんマニアックになっていっていると思います。
通常ではあり得ない、転調の仕方や、ディミニッシュコードの使い方など、作曲家たちは、工夫を凝らしています。
イキスギコードを通じて、音楽理論を解説してみました。
いきなり、音楽理論の本を読むよりも、一つの例があってからの解説の方が、理解しやすいと思います。
4和音のコードネームは、前後のコードを見ると、何を基準にしているかわかりやすいです。
作曲で、使いたい場合は、使い慣れているか?聞き慣れているか?がポイントとなってくるので、いろんな曲に触れましょう。
曲のアレンジで、わざわざテンションコードを記入しなくても、テンションコードが入っていることはたくさんあります。
アレンジに困ったときに、テンションノートを意識的に入れてみると視野が広がるので試してみて下さい。
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